新型コロナウイルスのワクチンについて
国が2月末までに供給体制を整えようとしている、新型コロナウイルスのワクチンについて、現時点で分かっていることを述べたいと思います。
ファイザー/ビオンテック社のワクチン
最初に接種可能となるファイザー/ビオンテック社のワクチンは、メッセンジャーRNAを用いたワクチンで、これを筋肉注射すると人の細胞で、新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク(コロナウイルスの赤い突起のようなもの)を作らせます。
RNAにスパイク糖タンパクの情報が入っているのです。
できたスパイク糖タンパクに対して抗体やT細胞が出来て、免疫が構築されます。
効果は95%と高く、3週間あけて2回目も接種することで、さらに免疫が強化されます。
副反応
副反応として最も多いのは注射部位の痛み(80%)、倦怠感(60%)、 頭痛(50%)となっています。いずれも軽症で、数日以内に改善します。
ワクチンの中にポリエチレングリコールが含まれており、まれにアナフィラキシーと呼ばれる「激しいアレルギー」を起こす人がいます。
したがって接種後30分くらいは診察室で様子観察します。
副反応は高齢者より若い人に多く見られました。対象は16歳以上です。
ワクチン接種の試験結果
ファイザー・ビオンテック社のコロナウイルスワクチンは、2021年3月にアメリカで12歳から15歳の人を対象に試験が行われました。
試験に参加した2260人のうち、本物のワクチンを受けた人は1131人で、残りの1129人は生理食塩水を注射しました。
ワクチンを接種したグループではコロナウイルス感染症を発症した人はいませんでしたが、生理食塩水を注射したグループでは16人の感染者が見られました。
副反応はこれまでと同様で、注射部位の痛み、だるさなどで、重篤な副反応はありませんでした。
この試験の結果をもって、今後12歳以上を対象にワクチン接種が認可されます。今のところファイザーのワクチンに限られます。
モデルナ社のワクチン
モデルナのワクチンも同様にメッセンジャーRNAを用いています。
18歳以上が対象で、筋肉注射を1ヶ月あけて2回行います。
副反応
副反応は注射部位の痛み(92%)、倦怠感(70%)、頭痛(65%)などとなっています。
軽度のものが多く、数日以内に改善します。激しいアレルギーの報告は少ないようです。
アストラゼネカ社のワクチン
最後にアストラゼネカ社のワクチンですが、これはアデノウイルスという風邪ウイルスを人工的に加工し、やはり同じスパイク糖タンパクを作らせるワクチンです。
上記2つのワクチンと異なり冷蔵保存できるので、取り扱いやすい特徴があります。
筋肉注射して、2回目は4~12週間後に接種します。18歳以上が対象です。
副反応
副反応は注射部位の痛み(60%)、頭痛や倦怠感(50%)などで、アセトアミノフェン(カロナール)をあらかじめ飲むことで軽減されたようです。数日以内で改善します。
ワクチン接種の試験結果
アストラゼネカのコロナワクチンを接種後に、血栓症を発症したと、ヨーロッパから報告がありました。
イギリスからの報告では23人が血栓症を引き起こしました。
ワクチン接種後、中央値12日、7割が50歳未満、6割が女性と、比較的若い女性に多い傾向にありました。
これまで知られている自己免疫性ヘパリン誘発性血栓症(HIT)と類似するメカニズムで、血小板の第4因子(PF4)に対する抗体ができることが分かりました。
検査結果として、フィブリノゲンの低下、血小板数の低下が認められ、dダイマーの上昇を伴う例もありました。
発症した人は皆もともとは健康で、病院に通院したことはありませんでした。
脳静脈洞血栓症とそれに続発する脳出血は致死的になり、肺血栓塞栓症もありました。
治療はヘパリンは悪化させるため使用せず、アルガトロバン、DOACという薬を使用した方が良いようです。
発生確率は低いのですが、どの人が発症するのかまだ分かっていません。
分かっているのはコロナが脅威であること
いずれのワクチンもこれまでにないタイプのワクチンで、効果がどれだけの期間持続するのか、長期的な人体への影響はないのかなど、不明な点があります。
ただ、新型コロナウイルスは何もしなければ、この先何年も脅威であり続けます。
ワクチンは少なくとも短期的には命に関わることはありませんが、新型コロナウイルスは死ぬことがある病気です。
現時点で最良の方法は、多くの人がワクチンを受けて集団免疫を獲得し、少しでも早く以前のような日常を取り戻すことではないでしょうか。
世論調査では、ワクチン接種を希望する人の割合は50%程度と示されています。
若いから風邪の症状で終わる、そもそもコロナウイルスなどでっち上げなどという意見もあるようですが、コロナウイルス感染症は本当に恐ろしい病気です。
ネットにあふれるウソの情報に惑わされないことが大事です。
この最悪のパンデミックはワクチンなしで収束させることはできません。是非ワクチン接種をされることをお勧め致します。
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