働きすぎは健康を害する?運動に関する新たな発見
「身体を動かすことは健康に良い」。これは長年信じられている常識です。
しかし最新の研究は、この単純な方程式に疑問を投げかけています。
デンマークのコペンハーゲン一般住民研究によれば、余暇時間の身体活動が心血管疾患や総死亡のリスクを減少させる一方で、労働中の身体活動はこれらのリスクを高める可能性があるというのです。
この研究は10万人以上の成人を対象とした大規模なもので、10年間の追跡調査を行いました。
その結果余暇時間の運動は心血管疾患のリスクを15%、総死亡リスクを40%も減少させることが明らかになりました。
一方で労働中の身体活動レベルが高い人は、これらのリスクがそれぞれ35%と27%増加するという、驚くべき結果も示されたのです。
なぜこのような逆説的なことが起こるのでしょうか。
研究者たちは、余暇時間の運動と労働中の身体活動の性質の違いに注目しています。
余暇時間の運動は短時間で心肺機能を向上させるのに十分な強度で行われ、適切な休息時間を確保できます。
しかし労働中の身体活動は長時間にわたることが多く、単調な動作や不自然な姿勢を伴うことが少なくありません。
これでは身体に疲労が蓄積しやすく、健康に悪影響を及ぼすのもうなずけます。
この研究結果は既存の運動ガイドライン(国内では「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」)にも一石を投じるものです。
現在のガイドラインは労働と余暇の身体活動を区別していませんが、この研究はそれぞれの活動が身体に与える影響が異なることを示しています。
今後は個人のライフスタイルや労働環境に応じた、よりきめ細かいアドバイスが必要になるかもしれません。
では私たちはこの結果をどのように日常生活に活かせば良いのでしょうか。
まずは自身の労働環境を見直し、改善できる点はないか考えてみましょう。
長時間同じ姿勢での作業が続く場合は適度に休憩を挟み、身体を動かすことが大切です。
そして余暇時間の運動の質を高めることも重要です。
ウォーキングやジョギング、水泳など、心肺機能を向上させる運動を、自身の体力に合わせて行いましょう。
身体活動は私たちの健康を支える重要な要素であることに変わりはありません。
しかしその効果は、活動の種類や状況によって異なることを知っておく必要があります。
この研究結果を参考にバランスの取れたライフスタイルを送り、より健康的な生活を目指しましょう。
参考文献:Holtermann et al, Eur Heart J. 2021 Apr 14;42(15):1499-1511
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